「アジャイル思考」とは?
〜日常生活にも活かせる思考術解説〜

2024.02.14更新
アジャイル思考とは

仕事や日常生活で「目標を達成するために、今何を改善すべきか」という問いに対して、明確な答えを持つ人はあまりいないのではないでしょうか。目標達成に限らず、問題解決なども含め不確実性の高い時代により高い生産性を実現して目標を達成するためには、これまでとは少し異なる物の見方・物事との向き合い方が必要なのかもしれません。

そこで役立つのが「アジャイル思考」です。アジャイル思考とは、スピーディーな進行と反復開発で完成度を高めていく、というアジャイル開発の考え方に基づきます。アジャイル思考は開発だけでなく、日常生活での目標達成や問題解決にも期待できるものです。本記事では、アジャイル思考とはどのような考え方なのか、メリットや実践方法を交えて解説します。

アジャイル思考とは

アジャイル開発」の概要

まず、アジャイル思考のもととなる「アジャイル開発」について紐解いていきましょう。

アジャイル開発とはソフトウェア開発手法の一つで、小さい単位で実装とテストを繰り返しながら開発を進める方法です。ウォーターフォール開発といった従来の開発手法よりも開発サイクルが短縮されるため「アジャイル(素早い)」と名づけられました。

技術の進化は目覚ましく、市場の変化が激しい現代において顧客のニーズは多様化しています。製品・サービスに対するニーズの多様化と変化のスピードに対応するには、効率的で迅速な開発が求められます。そのために考えられた開発手法がアジャイル開発です。

アジャイル開発では、反復開発で重要な機能から開発を進めて順次リリースし、ユーザーのフィードバックを得ます。ユーザーのフィードバックを取り入れながら開発サイクルを繰り返すことで、ニーズ理解の精度を上げ、市場の変化への柔軟な対応を目指します。その結果、高品質なユーザー体験の提供に繋げられるのです。

アジャイル思考」とは

アジャイル思考とは、アジャイル開発における「考え方」の部分を指します。アジャイル思考の対象は開発に限定されず、ビジネスや日常などあらゆる場面で取り入れられます。アジャイル思考の特徴は以下の通りです。

素早く実行して早期にフィードバックを得る

アジャイル思考では失敗しないために、検討に時間をかけることよりも「アクションを起こす」ことが重視されます。これは、何かしらアクションを起こすと、フィードバックや学びを得られるためです。フィードバックや学びを早期に受けられれば見直し改善のスピードを速められ、成功するまでの時間もより早くできます。なお、フットワーク軽くアクションを起こすためには、積極的にトライ&エラーを受け入れる姿勢も必要です。

短期間のプロセスを繰り返して精度を高める

アジャイル思考は、プロセスや取り組みを繰り返すことが前提です。フィードバックや学びをもとに次のアクションの精度を高めると、目的達成に必要なことがより明確になります。どのような目標であれ、たった一度のアクションで達成するのは至難の業でしょう。一度で上手くいくことを求めるのではなく、起こしたアクションに対して「あとは何があれば目標に近づけるのか」を導き出し、細かく改善することが必要です。アジャイル思考では「アクション・フィードバック・見直し改善・アクション」を短期間で何度も繰り返します。だからこそ、成果に繋げられるのです。

多くの場面で役立つアジャイル思考

日々の生活は変化が激しく、曖昧で複雑な問題に満ちています。人はそれぞれ異なる考え方を持ち、一つの仕事や役割にだけ専念すればよいわけではありません。決まった答えや正解がない中、頑張って計画を立てたとしても、物事の優先順位は毎日のように変化します。環境の変化に対応しながらも計画を遂行するのは、かなりの労力と気力を費やすでしょう。そこで役立つのがアジャイル思考です。アジャイル思考には、計画と環境変化への適合を両立させるための考え方や方法、ノウハウがあります。そのため曖昧で変化しやすく、かつ複雑な問題に対する最適な解決手段となるのです。アジャイル思考は、SaaS(サービス型ソフトウェア)企業の製品開発だけでなく、ビジネスシーンや日常生活でのあらゆる問題に取り組む際にも役に立ちます。

アジャイル思考の取り入れ方

仕事や日常生活にアジャイル思考を取り入れようと思っても、具体的に何から始めればよいか悩むでしょう。ここでは、日常生活にアジャイル思考をうまく取り入れるための4つのステップを紹介します。

1️⃣ Step 1:終わり(ゴール)から思い描く
2️⃣ Step 2:カテゴリから目標に落とし込む
3️⃣ Step 3:進行中のタスクを制限して「タスク完了の先送り」を最小限にする
4️⃣ Step 4:進捗確認を手軽に行なえるようにする

1️⃣ ステップ1:終わり(ゴール)を思い描く

スティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣(原題:The 7 Habits of Highly Effective People)』の中に、「終わりを思い描くことから始める」という言葉があります。

ゼロから何かを作り上げるには設計図が必要で、設計図を作るためにはまず“目指す最終状態(ゴール)”を明確に頭の中に描くことが大切です。目指す最終状態が明確になれば、アクションを起こしていけます。目指す最終状態を描くことは「人が1年の計画を立てる」「学生が新学期の目標を立てる」といった場面のほか、技術チームがソフトウェアの機能を考案する際にも重要な過程です。

最終状態を思い描いたら、そのゴールへの到達に必要な細かい目標を立てます。例えば、フルタイム勤務をしている人であれば「仕事」「健康的な生活」「ワークライフバランス」「家族」など、いくつかのカテゴリを作り、それぞれに実現可能な目標を立てるイメージです。なお、カテゴリの種類は、生活の変化やライフステージなどに応じて柔軟に変えてください。このカテゴリは、アジャイル開発で複数のユーザーストーリーをまとめた全体像である「エピック」に相当します。開発チームの場合、エピックの数は製品特性になり得る機能の分だけあるでしょう。

具体的な例として、カンバン方式でタスクを管理できるツール「Trello(トレロ)」を使い、学生生活でアジャイル思考を実践するケースを紹介します。下の画像では、学生生活を「School (学校)」「Healthy Lifestyle (健康&生活)」「Fun & Relaxation (娯楽)」などいくつかのカテゴリに分けて、次学期の目標を立てています。ぜひ参考にしてください。

2️⃣ Step 2:カテゴリから目標に落とし込む

次に、カテゴリごとに目標をより細かいタスクに分け、短い時間で達成可能な小さな目標を設定します。先ほどの例をもとにタスクを設定したのが次の画像です。

このときの小さな目標は、進捗度合いを数値化して計測できるものにしましょう。例えば、フルタイムの会社員が「仕事」カテゴリのゴールに「収入何%増」を掲げているとします。その目標に近づくための小さな目標は「スキル向上に向けたキャリアアップ集中トレーニングへの参加」にする、といった具合です。

アジャイル開発で、この小さなタスクの塊は「ストーリー」に紐づけられます。「ストーリー」とは、新機能を求める人の立場から書かれた“機能を端的に説明するもの”のことです。例えば、上の画像では「“Healthy”Lifestyle(より健康的な生活)」に対し「Have breakfast befor class(授業の前に朝食をとる)」がストーリーに相当します。開発チームであれば「ウェブのホーム画面にボタンを追加する」という内容がシンプルなストーリーの例です。

3️⃣ Step 3:進行中のタスク数を制限して「タスク完了の先送り」を最小限にする

タスクの実行は、少数のタスクに集中して完了させることが重要です。作業中のタスクを多数抱えていては、作業の切り替えに時間がかかり、効率が悪くなるでしょう。効率が悪くなれば、取り組み全体のスピードが低下してしまいます。そこで、有効な方法が「WIP(Work-in-Progress、進行中)制限」です。

例えば、ソフトウェア開発ではタスクのステータスを「未着手」「開発中」「コードレビューの準備完了」といったフェーズに分けて進捗を管理します。このとき「開発中」のタスク数は、開発スピードの低下やタスク完了の先送りを捉えるための指標です。通常3つ程度の「開発中」のタスク数が5つに増えれば、何かしらの事情により開発に遅れが生じていると考えます。

その場合は「開発中」のフェーズに、開発の遅れを防ぐためのWIP制限(タスク数の上限)を設定します。タスク数がWIP制限を超えると、チーム全体でタスク完了に総力を上げて取り組み、開発の遅れを取り戻します。こうして、タスクの抱えすぎを回避し、目標達成に向けた取り組みのスピードを維持するのです。下の画像では、WIP制限を「時間の有効活用」という目的で使っています。目標によって時間軸が異なるため、内容に応じて日単位と週単位のWIPを使い分けています。

4️⃣ Step 4:進捗確認を手軽に行なえるようにする

ここまでは、Trelloを使った学生生活の戦略的計画の例をご覧いただきましたが、アジャイル思考の実践に役立つツールはほかにも色々とあります。例えば、授業や運動、課外活動といった日々のスケジュール管理には、Googleカレンダーを利用すると便利です。スケジュールを友人間や夫婦間などで簡単に共有できます。

また、週末に次週の予定を立てたり「やることリスト」を日々確認したりするには、タスク管理ツールが役立ちます。実際に手を動かしてアイデアを記録したい方には、手帳もおすすめです。「すべきこと」「したほうがよいこと」「やれたらよいこと」のように、優先順位の高いものから順番に並べます。どのようなツールを使うにしても、やることの優先順位を決め、その進捗状況を日々自分の目で確認することが重要です。

アジャイル思考で大切な「振り返り」と「反復」

定期的に自分を振り返ることは大切です。振り返ることにより、時間の流れの速さに気づいたり、日々の生活を客観的に見つめたりします。

技術チームでは、繰り返される開発工程の1サイクルが終わるごとに「レトロスペクティブ」と呼ばれる振り返りミーティングが行なわれます。このミーティングを行なう頻度は、一般的に1週間に1度、もしくは2週間に1度です。直近に完了したサイクルの反省点を話し合い、開発プロセスの改善の可能性を探って改善方法を決めます。振り返りを実施しながら、繰り返し目標に向かって取り組むことで、確実に目標達成へと近づけます。

ときには、頭を長時間悩ませる問題にぶつかることもあるかもしれません。しかし、1つの問題に何時間も執着して頭が凝り固まっていては、自分一人での解決は難しくなります。頭を長時間悩ます問題に取り組む際には、時間を1時間~1時間半にするなどと決めましょう。その時間内に解決できないなら、問題の分野に精通した友人や同僚にアドバイスを求めることをおすすめします。同様に、同僚が一つの問題に手こずっているようであれば、相談にのったりアドバイスしたりして助け合うとよいでしょう。このとき「同僚の邪魔になるのではないか」と考える必要はありません。客観的な視点は、問題を早期解決に導く際に有用であるからです。大切なのは、問題解決に努力してもあまり進捗が見られなければ、同僚などに意見を求めましょう!

アジャイル思考の実践に関するよくある質問

アジャイル環境での業務経験の有無にかかわらず、仕事や学校、日常生活にアジャイル思考を取り入れる際のよくある質問を紹介します。

達成すべき目標はどのように決めるべきですか?

「今の状態からどのように変化させ、何を得たいか」など、最終的に目指す状態をより細かくイメージするとよいでしょう。「自分のキャリアをXからYへ方向転換したい」といったように希望を明確してください。

今ある目標を「日・週・月ベースの具体的なタスク」に落とし込む方法を教えてください。

日々のタスク決定において、自分一人でできることを考えてみましょう。例えば「1日20分は専門家のブログやメディアに目を通す」といった感じです。週ベースのタスクとしては「ブログ記事を書く」といったアウトプットの場を設けるほか、振り返りの実施をタスクに落とし込むとよいでしょう。月ベースのタスクとしては、イベントなど他者との交流がある場への参加もおすすめです。

タスクの優先順位を決めるコツは何ですか?

目標に向かって現状を変化させる中で必要となる学びを、より多く得られるタスクを優先しましょう。

今のタスクをシンプルかつ手軽に管理し、可視化するよい方法はありますか?

「やること」リストの作成がおすすめです。ノートに書き出す方法がよいか、電子ツールで管理するのがよいかは好みに合わせて選んでください。

「タスクを完了する、目標を達成する」といったことが不得意です。目標達成の機会を増やす何かよい方法はないでしょうか?

タスクを進めるのが困難な場合には、一人で悩みすぎずに専門家や友人に相談することをおすすめします。技術的な問題の解決に取り組む場合には、週に1度は集中して取り組むといった「研究時間」を設定するとよいでしょう。

アジャイル思考を取り入れよう!

「半年あるいは1年後の状況は今とは違うかもしれない」と思うと、目標に向かってどのように進めばよいか、わからなくなるかもしれません。戸惑っている間に時間が経過してしまうようであれば、状況の不確実性や変化を前提とした「アジャイル思考」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

PagerDutyでは、メンバーの目標達成のためにアジャイル思考を取り入れています。PagerDuty公式ブログでは、システム開発や保守、障害対応に必要なさまざまなナレッジを紹介しています。システム開発や保守における目標、目標に向けて必要なタスクを考える上での参考になりますので、ぜひほかの記事もご覧ください。

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