アイレット様事例

- 従業員数
- 1,215名(2024年10月末時点)
- 事業内容
- クラウドを活用したシステムやスマホアプリの開発・運用、UI/UXデザイン制作 、自社サービス「cloudpack」の提供、他
- 所在地
- 東京都港区虎ノ門1-23-1 虎ノ門ヒルズ森タワー7F
- 取引期間
- 2015年〜
- 1001〜5000名
- エンジニア負荷の軽減
- ヒューマンエラー削減
- インシデントへの迅速な対応
- 組織・体制変革
- アラートの集約と精査
- IT・通信
- コスト削減
- アラートノイズ
- PagerDuty導入前の課題
- メールベースのアラート対応で、漏れや遅延などの ヒューマンエラーにつながるリスクが増大
- 東京と大阪の2拠点にわたる対応状況や対応者の把握が困難
- アラート対応履歴を残し、事後の分析や運用改善に 活用できる仕組みが必要
- PagerDuty導入効果
- 独自システムとの連携によりアラート対応の80% 以上を自動化し年間 1,000 人月を削減
- アラートを一元化し、優先度や対応状況をリアルタイムに可視化
- インシデントデータを運用分析に活用し、継続的な運用改善を実現
目次
システム・アプリケーションの開発、グラフィック・UI/UX デザイン制作からインフラの構築・運用までをワンストップで提供するアイレット株式会社。同社が提供する「cloudpack」の運用監視サービスでは、24時間365日体制で約1万台のサーバーを管理している。事業の拡大に伴いアラート件数が急増していた同社は、PagerDutyを導入し、アラートの一元化を実現すると共に、独自開発のシステムとの連携によりアラート対応の自動化を推進。大規模運用における効率化と品質向上を実現しました。
「cloudpack」運用監視サービスの拡大に伴いアラート件数が急増
2003年、システム開発会社として創業し、クラウド事業で急成長中のアイレット株式会社は、創業当時から大切にしている「スピード感」と常に挑戦を続ける「ベンチャー魂」を武器に、クラウドの導入・運用支援をはじめ、クラウドを活用したシステム開発、UI/UXデザイン制作、さらにはKDDIグループと連携したDX・クラウド開発推進などを手がけている。
同社の成長の核を担ってきたサービスの一つに、2010年に提供を開始したクラウド支援サービス「cloudpack」がある。これは、お客様のさまざまなクラウド環境を中心としたワークロードに対して提供するフルマネージドサービスであり、24時間365日体制の運用監視を中核としている。同社は2013年には日本初の「AWS プレミアコンサルティングパートナー(現 AWS プレミアティアサービスパートナー)」の1社として認定され、その後現在まで認定を継続中だ。これまでのAWS導入実績は2,500社以上、年間プロジェクト数は4,300以上に上り、スタートアップ企業から大企業まで、規模や業種を問わず幅広いお客様に活用されている。
この「cloudpack」運用監視サービスの提供において、各監視ツールから発報された大量のアラートメールを、MSP(マネージドサービスプロバイダー)のメンバーが優先度を手動で判断しながら対応している状況だったという。そんな中、事業の拡大に伴い、MSPが対応するアラートの件数が急増。メールベースでアラート対応を行うやり方を続けていては、対応の漏れや遅れなど、ヒューマンエラーにつながるリスクがますます高まるのは明らかだった。そこで同社は、次の3つの観点から課題解決に向けて動き出すことにした。
1つは、さまざまな監視システムからのアラートを一元的に管理し、対応のプロセスを効率化すること。2つ目は、東京、大阪の2拠点で行っている対応の進捗状況や対応者の情報を可視化すること。3つ目は、すべて手動で行われていたアラート対応を自動化してヒューマンエラーを回避すると同時に、アラート対応履歴を残し、事後の分析や運用改善に活用していくことである。
これらの3つを実現できるツールとして同社が導入を決定したのが、「PagerDuty」である。インシデント管理をPagerDutyに集約できることに加え、700以上もの監視ツールや外部システムとの連携が可能で拡張性に優れること、対応状況の可視化により漏れや遅延を防げることなど、同社の叶えたい要件をすべて満たしていたことが決め手となった。
独自システムとPagerDutyとを連携し効率化と品質向上を両立
同社は、PagerDutyにより複数の監視システムからのアラートを一元的に集約。メールベースのアラート対応で生じていた課題を段階的に解決していった。アラート対応件数が急増している最中での導入であったこともあり、大規模運用における効率化と品質のさらなる向上を目指して、アラート対応の自動化機能を組み合わせながら検討を進めたという。
特徴的なのは、独自開発したシステムとPagerDutyを連携させている点である。その1つが、監視業務を自動化するためのAMS(AdvancedMonitoringSystem)と呼ばれるシステムである。導入当初、PagerDutyには自動化機能がまだ充実していなかったため、このAMSとPagerDutyとを連携させることで一次対応を自動化した。さらに、運用分析プラットフォームと呼ばれる分析ツールを開発。PagerDutyのインシデントデータを可視化し、アラートの件数や一次対応にかかった時間を分析できる体制を実現している。
PagerDutyの導入は、同社に顕著な効果をもたらしている。まず、効率化の観点では、アラートの優先度や対応状況がリアルタイムに把握できるようになったほか、ダッシュボードにすべての情報が集約されたことで、大量のアラートメールから優先度を切り分けて対応していく必要がなくなり、対応のスピードが劇的に向上。また、東京と大阪の2拠点間で進捗状況が可視化されたおかげで、誰がどのアラートに対応しているのか、どのくらい時間がかかっているのかといった情報を詳細に把握できるようになり、対応の重複や漏れを防ぎ、運用効率の向上につながっている。
監視業務の効率化と品質の向上という2つの目的がPagerDudyの導入によって達成されたことは、定量的効果を見ても明らかである。
まず、運用工数としては、PagerDutyとAMSとの連携によりアラート対応の80%以上を自動化。手作業を排除したことで、直近2年間で約1,000人月の削減に成功した。また、対応品質の観点では、自動化による対応の標準化を実現し、平均一次対応時間を大幅に短縮。2020年には664秒だった平均一次対応時間を2024年には165秒まで短縮。75%の大幅な削減を実現している。同時にサービスレベル目標の達成率も改善されたという。
さらに、PagerDutyと運用分析プラットフォームを組み合わせて分析機能を強化することにより、負荷の高いアラートや、時間帯ごとのサービスレベル目標の達成率を可視化。その結果を自動で配信することで、問題点の早期発見と、継続的な運用改善が可能な体制を構築した。これにより、2022年度には393人月だった有人一次対応時間が2023年度には268人月と、125人月(31.8%)もの削減を達成している(PagerDuty分析による実績値)。
PagerDutyと独自システムを連携させた活用方法により、監視対象の規模が拡大している中でも、運用工数の大幅な削減、対応品質の向上、さらには継続的な分析・改善効果を実現できているとして、同社の満足度は高い。
進化したPagerDutyの機能を駆使してインシデント管理体制を強化
導入後、PagerDutyの進化に伴い自動化機能や生成AI機能「AIOpsアドオン」なども充実してきており、同社は、これらの機能を活用してさらなる自動化を進める計画だ。具体的にはイベント初動対応を効率化する「Event Orchestration」や、システム運用を自動化する「Runbook Automation」を活用した調査・修復業務の自動化、インシデント対応における単純な反復作業を自動化する「Incident Workflow」によるアクション、生成AIによるポストモーテムの自動作成やインシデント対応履歴の要約など、進化したPagerDutyの機能をフル活用してインシデント管理体制を強化していくという。
PagerDutyを中核に、より迅速かつ効率的な対応を実現すると同時に、その品質を高めることで、同社の成長を担うフルマネージドサービス「cloudpack」の顧客満足度向上を目指します。

後藤田 勝也 氏
アイレット株式会社
クラウドインテグレーション事業部 MSPセクション